街のエネルギーを、線に込めて。——JERRY CHO という作家について。

街のエネルギーを、線に込めて。——JERRY CHO という作家について。

信号待ちの雑踏、市場の呼び声、ネオンの反射。香港という街は、静止画では捉えきれないエネルギーを持っている。そのエネルギーを、線と色で描き続けてきたアーティストがいる。JERRY CHOだ。CAMELの116シリーズには、彼が描いたアートワークをまとった一本がある。日用品としてのボトルと、アーティストの表現。一見交わらないふたつが、どのように出会ったのかをたどってみたい。

JERRY CHOという作家について

300冊を超える制作から生まれた表現

JERRY CHOは、香港を拠点に活動するコミックアーティスト・トランスメディアクリエイターだ。長年にわたり香港の複数のコミック会社に関わり、これまでに300冊を超えるコミック作品の制作に携わってきた。

2017年には自身のスタジオ「JerryCho Workshop」を設立。コミックにとどまらず、小説、アニメーション、広告、イラストレーション、壁画など、メディアの垣根を越えた表現を手がけている。ひとつの画風に留まらず、依頼や題材に応じて表現の幅を広げ続けてきたことが、この作家の特徴だ。

伝統と現代が交差する画風

その作品には、伝統的な中国美術のエッセンスと、モダンな表現が同居している。筆致の力強さ、構図のダイナミズム。それでいて、題材には香港の街並みや歴史がたびたび選ばれる。

過去から続く技法を使いながら、描くのは今この瞬間の香港だ。古いものと新しいものが同じ画面の中で共存する感覚は、香港という街そのものの姿とも重なる。

メディアを横断する、スタジオという場

JerryCho Workshopが手がける領域は幅広い。コミック単体の制作だけでなく、そこから派生する小説、アニメーション化、広告表現、壁画といった仕事にも取り組んでいる。ひとつの物語やキャラクターが、メディアを横断しながら形を変えていく。それが、このスタジオの創作スタイルだ。

広告や商業デザインの分野でも活動してきた経験は、彼の作品に独特の実用性を与えている。芸術としての完成度と、見る人に伝わるわかりやすさ。その両方を兼ね備えた表現は、コミックという枠を超えて、さまざまなプロダクトやブランドとの協業でも生かされてきた。

依頼元の意図を汲みながら、自分自身の作風を失わない。この匙加減の難しさを、300冊を超える制作と、幅広い媒体での仕事を通して身につけてきた。CAMELとのコラボレーションにおいても、ブランドが大切にしてきた静けさや誠実さと、彼自身の躍動感あふれる画風は、決して相反するものではなく、むしろ補い合う関係として一本のボトルの中に共存している。

香港の街を、線に込める

ダイナミズムという表現

この作家の作品を特徴づけるのは、静けさよりも躍動感だ。香港という街が持つエネルギーや空気感を、力強い線と構図でとらえる。

それは、観光地としての香港ではない。日々そこで生活し、働き、行き交う人々がつくり出す、街そのものの活気だ。彼はその空気を、コミックやイラストレーションという手法を通して形にしてきた。

手仕事とデジタル、両方を行き来する

長年のコミック制作で培った手描きの表現力と、広告やアニメーション制作で求められるデジタルな精度。この作家の仕事は、この両方を自在に行き来する。

手描きの筆致が持つ温度感と、デジタル表現がもたらす鮮やかさや構図の自由度。どちらか一方に偏らず、題材や媒体に応じて使い分けてきたことが、300冊を超える制作を支えてきた土台でもある。ボトルという立体物にアートワークを落とし込む際にも、この柔軟さが生きている。平面のページと違い、曲面を持つボトルの表面では、線の見え方や配色の映り方がまったく異なる。そうした制作環境の違いに対応できる引き出しの多さも、彼の強みのひとつだ。

日用品が、キャンバスになるということ

コミックの1ページや、壁画の1面と違い、ボトルの表面は限られた面積しかない。しかもそれは、平面ではなく曲面だ。持ち歩かれ、毎日手に触れられる。そういう制約の多い場所に、アーティストの表現を落とし込むことは、決して簡単な作業ではない。

それでも、JERRY CHOが描いた116のボトルを手にすると、そこには確かに彼らしい躍動感が宿っている。小さな面積の中に、香港の街の空気をどう閉じ込めるか——その挑戦の跡が、ボトルの表面に残っている。

116 JERRY CHOというボトル

CAMELのアーティストコラボレーションシリーズのひとつとして、116(450ml)にはJERRY CHOが手がけたアートワークをまとったモデルがある。香港という都市が持つエネルギーや空気感を、ボトルという小さな面積の中に閉じ込めたような一本だ。

ガラス内瓶という素材は、香港で長年守られてきたCAMELのものづくりの核心にある。そこに、同じ香港を拠点とするアーティストの表現が重なる。素材とアートワーク、どちらも香港という土地から生まれたものだという点で、このコラボレーションには必然性がある。

職人の手仕事と、アーティストの筆致

1940年代から続く、香港のものづくり

CAMELは1940年代、香港・九龍湾の自社工場から始まったブランドだ。大量生産ではなく、職人の手で一本ずつ仕上げるという姿勢を、今も守り続けている。ガラス内瓶という選択も、その姿勢の延長線上にある。

彼が積み重ねてきた300冊を超える制作も、同じように地道な手仕事の積み重ねだ。一冊一冊、一枚一枚と向き合いながら、自分の表現を磨き続けてきた歳月がある。ものをつくるという営みにおいて、CAMELとこの作家には共通する態度がある。

香港という土地が育てたもの

CAMELというブランドも、この作家も、香港という同じ土地から生まれた。密度の高い街並み、東西の文化が交差する歴史、絶えず動き続けるエネルギー。そうした土地の空気が、それぞれのものづくりの根底に流れている。ひとつは飲み物を運ぶ道具として、もうひとつは物語を伝える手段として、それぞれ異なる形でこの街を表現してきた。

だからこそ、このコラボレーションには単なる企画以上の必然性がある。同じ土地の記憶を、それぞれ異なる手法——ボトルと、絵——で表現してきた者同士の出会いだ。

評価される作家性

日本国際漫画賞という舞台

JERRY CHOは、外務省が主催する日本国際漫画賞において評価を受けているアーティストのひとりだ。2025年の第19回では、110の国と地域から738作品という過去最多の応募があった中、彼が共同制作に携わった作品が入賞に選出されている。

日本国際漫画賞は、海外における漫画文化の普及と、漫画を通じた国際文化交流への貢献を目的として、2007年に創設された賞だ。国境を越えて評価されるという事実は、彼の表現が持つ普遍性を物語っている。ローカルな題材——香港の街並みや歴史——を描きながら、それが国境を越えて共感を呼ぶ。これは、決して簡単なことではない。

身近な日常や、暮らす街への眼差しから出発した表現が、遠く離れた国の審査員の心にも届く。そこには、特定の文化圏だけに閉じない、普遍的な物語の力がある。CAMELがこの作家とのコラボレーションを選んだ理由のひとつも、まさにこの点にある。

香港という土地から、世界へ

コミック、イラストレーション、壁画、広告——この作家の活動は、香港という土地に根ざしながら、メディアや国境を越えて広がっている。CAMELとのコラボレーションも、その延長線上にある。

ボトルという日用品に、アーティストの表現が宿る。それは、特別な日のためだけのものではなく、日々の暮らしの中で、少しだけ豊かな時間を運んでくれる存在になる。

ボトルに、物語を込めるということ

116シリーズが、キャンバスに選ばれる理由

CAMELの116は、これまでも複数のアーティスト・IPとのコラボレーションを重ねてきた。Bruce Leeの哲学「Be Water」を宿した116もそのひとつだ。ジャンルも表現手法も異なる作り手たちが、なぜ同じ116というボトルを選ぶのか。

理由は単純だ。116は、ガラス内瓶という機能面での完成度に加えて、表面がアートワークを美しく見せる面積とフォルムを持っている。実用品でありながら、アーティストの表現を邪魔しない静かな佇まい。それが、多様な作家との協業を可能にしてきた。

日常に、アートを持ち歩くということ

美術館やギャラリーでしか出会えないアートと、毎日バッグに入れて持ち歩くボトルは、本来遠い存在だ。CAMELのアーティストコラボレーションは、その距離を縮める試みでもある。

朝、水筒に手を伸ばすたびに、JERRY CHOが描いた香港の躍動感が視界に入る。それは、鑑賞するアートというより、生活の中に溶け込んだアートだ。特別な瞬間だけでなく、なんでもない一日の中にこそ、アーティストの表現が寄り添う。CAMELが目指しているのは、そういう関わり方だ。

美術館に足を運ぶ時間がなくても、日々使う道具を通して、誰かの表現に触れることはできる。忙しい毎日の中でふと目に入るアートワークが、小さな気分転換や、遠く離れた街への想像力を運んでくれることもある。ボトルというごく身近な存在に、そうした役割を持たせることこそ、このコラボレーションの静かな野心だ。

これからも続く、アーティストとの物語

CAMELとこの作家のコラボレーションは、116シリーズだけにとどまらない。香港のアーティストたちとの対話は、これからも新しい形で続いていく予定だ。ボトルという小さなキャンバスの上で、次にどんな表現が生まれるのか。その物語は、まだ途中にある。

コミックの世界で培われた物語をつくる力、メディアを横断してきた柔軟さ、そして香港という街への率直な眼差し。JERRY CHOという作家がこれまで積み重ねてきたものは、一冊の本の中だけでなく、これから先も、CAMELというブランドとの関わりの中でさまざまな形をとっていくはずだ。

街のエネルギーを、線に込めて。彼が描くものは、いつも香港という街への、率直な眼差しだ。その視線を、CAMELのボトルを通して、日々の暮らしの中に持ち帰ってほしい。持ち歩くたびに、香港のどこかの路地の空気が、少しだけ手のひらに戻ってくる。そんな一本になれば、このコラボレーションは目的を果たしたことになる。

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よくある質問

Q. JERRY CHOとはどんな作家ですか?

香港を拠点に活動するコミックアーティスト・トランスメディアクリエイターだ。300冊を超えるコミック制作に携わり、2017年に自身のスタジオ「JerryCho Workshop」を設立。コミックのほか、小説、アニメーション、広告、イラストレーション、壁画など、幅広いメディアで表現活動を行っている。

Q. 116 JERRY CHOには、どんなアートワークが描かれていますか?

香港という都市が持つエネルギーや空気感を、ボトルの中に閉じ込めたようなアートワークが描かれている。伝統的な中国美術のエッセンスと、モダンな表現を掛け合わせた、力強く躍動感のある作風が特徴だ。

Q. JERRY CHOは受賞歴がありますか?

2025年の第19回日本国際漫画賞(外務省主催)にて、共同制作した作品が入賞に選出されている。110の国と地域から738作品という過去最多の応募の中での選出だ。

Q. 116シリーズには、JERRY CHO以外のコラボレーションもありますか?

ある。同じく香港出身のアーティストPEN SOとのコラボレーションモデルや、その他のアーティスト・ブランドとのコラボレーションモデルも展開している。詳細はアーティストコラボレーションシリーズで確認できる。

Q. 今後も、アーティストとのコラボレーションは続きますか?

香港のアーティストたちとの対話は、116シリーズにとどまらず、これからも新しい形で続いていく予定だ。ボトルという道具を通して、香港の作り手たちの表現を届けるという試みは、CAMELにとって継続的なテーマのひとつになっている。詳細が決まり次第、Journalや各種案内でお知らせしていく。

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