水になれ。——Bruce Lee が遺した言葉と、一杯のお茶。
「Be water, my friend.」
心を空にしろ。形なきものとなれ。
水のように、無定形に。
水はコップに入ればコップの形になる。ボトルに入ればボトルの形になる。急須に入れれば、急須の形になる。水は流れることもできれば、打ち砕くこともできる。
水になれ、わが友よ。
これは、Bruce Lee(ブルース・リー)が1971年のテレビインタビューで語った言葉である。武術の哲学として生まれたこの言葉は、やがて世界中の人々の心に届き、半世紀を超えた今も引用され続けている。
「考えるな、感じ取れ。」
映画「燃えよドラゴン」の冒頭、Bruce Lee は弟子にこう語りかける。
「Don't think. Feel.」
型にはまらず、目の前の状況を感じ取り、それに応じて動く。Bruce Lee が生涯をかけて追求したジークンドー(截拳道)の哲学は、武術の枠をはるかに超えていた。老子の思想、禅、宮本武蔵の『五輪書』——東洋の智慧を貪欲に吸収し、自らの言葉に変えていった。ワシントン大学で哲学を学んだ彼にとって、武術とは生き方そのものであった。
香港から、世界へ。
1940年、サンフランシスコに生まれ、香港で育ったBruce Lee は、1973年、32歳という若さでこの世を去った。しかし没後50年以上を経た今も、その存在感は色あせない。
日本では特別な熱量で愛され続けている。アニバーサリーのたびに主演作が上映され、関連書籍や雑誌の刊行は絶えず、ファンが所有する遺品の数は世界一とも言われる。香港本国でさえ記憶が薄れつつある中で、日本だけが「特異点」であり続けているのだ。
その理由のひとつは、Bruce Lee の哲学が持つ普遍性にある。「水になれ」という言葉は、武道の枠を超え、しなやかに生きることの美しさを静かに教えてくれる。それは、日本人が古くから大切にしてきた感覚と、どこか深く響き合う。
ガラスの内瓶に、哲学を注ぐ。
CAMELは1940年代の創業以来、ガラス内瓶にこだわり続けてきた。
金属に触れない。素材を汚さない。液体をそのままの姿で受け入れる。
コーヒーでも、紅茶でも、白湯でも——ガラスは何も主張しない。ただ静かに、注がれたものの形になる。
それはまるで、「Be water」の哲学そのものである。
Bruce Lee 生誕85周年と、CAMELブランド誕生85周年が重なったこの年。ふたつの85年を記念したコラボレーションモデル「116 BruceLee」が生まれた。香港のアーティスト Man Tsang(Man僧)が描き下ろしたアートワークを纏い、香港の自社工場での手作り工程を経て完成した一本である。
手元に置いて、一杯のお茶を注ぐ。それだけで、半世紀を超えた哲学がそこにある。