壁の中にも、街があった。——『九龍城寨』とCAMELが描いた記憶。
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壁の中にも、街があった。
密集する建物、迷路のような路地、そこに息づく人々の暮らし。1990年代に姿を消した九龍城砦(クーロン・ウォールド・シティ)は、無法地帯として知られながらも、確かにひとつの街だった。その記憶を大画面によみがえらせた映画『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』の世界観が、CAMELの116シリーズにも宿っている。物語の背景と、ボトルに込められたものをたどってみたい。実在した場所と、フィクションと、日用品。三者がどう結びついているのか、順を追って見ていく。
九龍城砦という、実在した場所
無法地帯と呼ばれた、高密度の街
九龍城砦は、香港・九龍地区にかつて実在した居住区だ。行政の規制が十分に及ばない特殊な環境の中で、高密度な建築と独自の生活圏が形成されていった。最盛期には狭い敷地に数万人が暮らしていたとされる。無法地帯として語られる一方で、そこには診療所も、工場も、日々の暮らしを支える商店も存在していた。
光がほとんど届かない路地、頭上まで迫る建物、その隙間を縫うように張り巡らされた配管や電線。写真や記録映像で見るその景観は、混沌としていながらも、そこに暮らす人々の知恵と工夫が積み重なった結果でもあった。行政の規制が十分に及ばない環境の中でも、人々は生活を営み、独自のコミュニティを形成していたという事実は、単なる「無法地帯」という言葉だけでは語り尽くせない奥行きを持っている。生活のための工夫が積み重なって生まれた独特の建築様式は、今も多くの写真家や作家の関心を集め続けている。
1987年、香港政府と中国政府が撤去方針を発表し、住民の移転を経て、1993年から94年にかけて解体された。今はもう存在しないその場所の記憶は、写真集や小説、映画といったかたちで語り継がれている。
小説から、漫画から、映画へ
『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』は、余兒(ユイ)による小説と、司徒劍僑(アンディ・セト)による漫画化作品を原作とする実写映画だ。無法地帯として知られたこの場所に迷い込んだ若者と、彼を取り巻くアウトローたちの戦いと絆が描かれている。小説から漫画へと展開され、長く物語世界を広げてきた作品が、今回の映画化につながっている。
物語が小説から漫画へ、そして映画へと形を変えながら受け継がれてきたこと自体が、この場所がいかに多くの人の想像力を刺激し続けてきたかを物語っている。実在した場所を舞台にしたフィクションでありながら、そこからは、失われた風景をもう一度立ち上げようとする強い意志も感じられる。
香港映画史に刻まれた一作
1980年代を舞台にしたこの物語は、単なる過去の再現にとどまらない。失われた場所への郷愁を、現代の観客にも伝わる熱量あるアクションとして描き直したことが、この作品を特別なものにしている。
監督ソイ・チェンと、豪華なキャスト陣
監督を務めたのはソイ・チェン(鄭保瑞)。ルイス・クー、レイモンド・ラムを中心に、サモ・ハン、リッチー・レン、テレンス・ラウ、フィリップ・ンら、香港映画界を代表する俳優陣が名を連ねている。2024年に香港で公開され、日本では2025年1月17日に『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』として劇場公開された。
香港のベテラン俳優から実力派まで幅広い世代が集結したこの布陣も、話題を呼んだ理由のひとつだ。長年香港映画を見てきたファンにとっても、初めて香港アクションに触れる観客にとっても、それぞれの角度から楽しめる作品として仕上がっている。
世界が認めた作品性
この作品は、第77回カンヌ国際映画祭の「ミッドナイト・スクリーニング」部門に正式選出された。香港では興行収入が1億香港ドルを突破し、2024年9月時点では、広東語映画として歴代最多の観客動員数を記録する大ヒットとなった。
2025年の第43回香港電影金像獎では、作品賞(最佳電影)をはじめ、撮影、編集、美術、衣装・メイク、アクション設計、音響、視覚効果など、多数の部門を受賞している。さらに、第97回アカデミー賞国際長編映画賞では、香港代表作品として出品された。
アクション映画としての熱量だけでなく、失われた場所への郷愁と敬意を込めた作品として、香港内外で高く評価されている。実在した場所を舞台にしているからこそ、単なる娯楽作品を超えて、九龍城砦を知る世代にとっては、失われた香港の風景をスクリーン上でもう一度見る作品にもなった。
116 TWILIGHT-CITY / TWILIGHT-DRAGONというボトル
ふたつのデザインに込められたもの
CAMELのアーティストコラボレーションシリーズのひとつとして、116(450ml)には、この映画とその世界観をまとった2つのデザインがある。
「116-TWILIGHT-CITY」は、密集するビル群と路地が折り重なる城砦の街並みを描いたデザインだ。薄暮の光に沈むスカイラインと、ボトル全体に広がるディテールが、映画のワンシーンを切り取ったような佇まいを見せる。
「116-TWILIGHT-DRAGON」は、黒地に浮かび上がる金色のドラゴンと書のコントラストが印象的な一本だ。闇の中でうごめく城砦の守り神のようなモチーフは、ドラゴンという意匠が持つ力強さを静かに湛えている。
ひとつは風景として、もうひとつは象徴として。CITYが九龍城砦という街並みそのものを描くのに対し、DRAGONは龍と書という意匠によって、映画が持つ力強い世界観を表現している。異なるアプローチで作品の空気をまとった2つのデザインだ。どちらか一方を選ぶか、両方を手にするか。それ自体も、このシリーズを楽しむひとつの方法だ。
ガラス内瓶という選択
116はもともと、CAMELのガラス内瓶モデルの中核を担う一本だ。飲みものが金属に触れにくいガラス内瓶と、真空二重構造による保温・保冷性を両立させている。日々使えるボトルとしての機能を持ちながら、映画の世界観をまとっている。コレクションアイテムとして飾るだけでなく、実際に毎日の飲みものを入れて使うことで、映画の余韻がより身近なものになる。
製造は、香港工場で、手作業の工程を含む製造が行われている。映画の舞台となった土地と同じ香港で生まれたボトルであることも、このシリーズならではの背景のひとつだ。
116 TWILIGHTシリーズは、コレクションとして楽しめるだけでなく、通常の116と同じガラス内瓶と真空二重構造を備えている。映画の世界観と、日用品として使い続けられる機能。その両方を持つところに、この一本の面白さがある。
消えた場所の記憶を、受け継ぐ
この場所をテーマにするのは、CAMELのJournalにとって初めてのことではない。PEN SOとのコラボレーション記事で触れたように、彼自身も2017年に九龍城砦を題材にした作品集を発表しており、実在した建物や場所を描き残すことをライフワークのひとつにしてきた。
ジャンルも手法もまったく異なる映画とイラストレーションが、同じ場所の記憶に向き合っている。すでに存在しない街が、これほど多くの作り手の手を通して語り継がれているという事実そのものが、この場所の重みを物語っている。
写真では伝えきれない生活の質感、地図には残らない路地の記憶。そうしたものを、それぞれの表現者が、それぞれの手法で掬い上げようとしてきた。CAMELのボトルもまた、その連なりに加わるひとつの試みだと言える。
ボトルに、物語を込めるということ
116というキャンバス
CAMELの116は、これまでも複数の作り手とのコラボレーションを重ねてきた。Bruce Leeの哲学「Be Water」を宿した116、香港の躍動感を描くJERRY CHOとのコラボレーション、東京と香港の対話を描くditto dittoとのコラボレーションもそのひとつだ。映画という新たなジャンルが加わったことで、116というボトルが持つ表現の幅は、さらに広がったといえる。
Bruce Leeの言葉、コミックアーティストの筆致、活版印刷から生まれたイラストレーション、そして映画という総合芸術。それぞれまったく異なる出自を持つ表現が、同じ116というフォルムの上で共存している。この振れ幅の大きさこそが、CAMELのアーティストコラボレーションを特徴づけている。
実用品でありながら、作り手の世界観を邪魔しない静かな佇まい。それが、ジャンルを問わずさまざまな表現との協業を後押ししてきたのかもしれない。哲学、コミック、イラストレーション、活版印刷、そして映画。116というひとつのフォルムが、これほど幅広い表現の受け皿になっていること自体が、静かな驚きでもある。
日常に、映画の記憶を持ち歩くということ
劇場を出たあとも、その世界観を手元に置いておきたい。そう感じたことがある人は少なくないはずだ。CAMELのアーティストコラボレーションには、そうした余韻を日常に持ち込む面白さがある。
デスクの上のボトルにふと目をやったとき、薄暮に沈む城砦のスカイラインや、闇に浮かぶ金色のドラゴンが視界に入る。それは、映画館で触れた世界観を、日々のティータイムの中でもう一度思い出させてくれる仕掛けでもある。物語の熱量は、スクリーンを離れたあとも、こうして静かに生活の中に残り続ける。
香港の街と映画の記憶を、毎日の一杯とともに
九龍城砦は、もうこの世界のどこにも存在しない。それでも、小説になり、漫画になり、映画になり、そしてボトルになることで、その記憶は形を変えながら受け継がれている。ひとつの場所が、これほど多様なかたちで語り継がれていること自体が、九龍城砦という場所の強い存在感を物語っている。
密集した路地の空気も、薄暮に浮かぶスカイラインも、闇の中で光る守り神のようなドラゴンも。一本のボトルを通して、日々の暮らしの中にそっと持ち帰ってほしい。もう存在しない場所の記憶を、これほど身近な形で受け継げることは、決して当たり前ではない。香港の街と映画の記憶を、毎日の一杯とともに。
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→ 116 TWILIGHT-CITY / TWILIGHT-DRAGONを見る
よくある質問
Q. 『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』とは、どんな映画なのか。
2024年公開の香港アクション映画で、原題は『九龍城寨之圍城』だ。監督はソイ・チェン、出演はルイス・クー、レイモンド・ラム、サモ・ハン、リッチー・レンらが名を連ねている。実在した居住区・九龍城砦を舞台に、若者と彼を取り巻くアウトローたちの戦いと絆を描いている。日本では2025年1月17日に劇場公開された。第77回カンヌ国際映画祭「ミッドナイト・スクリーニング」にも正式選出されている。
Q. 九龍城砦とは、どんな場所だったのか。
香港・九龍地区にかつて実在した居住区だ。行政の規制が十分に及ばない特殊な環境の中で高密度な建築が積み重なり、無法地帯として知られる一方、診療所や商店もある独自のコミュニティが築かれていた。最盛期には狭い敷地に数万人が暮らしていたとされる。1993年から94年にかけて取り壊され、現在は存在しない。
Q. 116 TWILIGHT-CITYとTWILIGHT-DRAGONの違いは何か。
TWILIGHT-CITYは、密集する建物や路地が折り重なる九龍城砦の街並みを描いたデザインだ。TWILIGHT-DRAGONは、黒地に金色のドラゴンと書をあしらい、映画の力強い世界観を象徴的に表現している。風景とモチーフ、異なるアプローチで作品世界を楽しめる2つのデザインだ。
Q. このシリーズもガラス内瓶なのか。
ガラス内瓶・真空二重構造の116がベースになっている。飲みものが金属に触れにくく、コーヒーやお茶の香り・味わいをそのまま楽しめる仕様は、他の116シリーズと変わらない。香港工場での手作業の工程を含む点も共通している。
Q. 116シリーズに、映画以外のコラボレーションはあるか。
ある。Bruce Leeの哲学を宿したモデルや、JERRY CHO・PEN SOといった香港出身アーティストとのコラボレーション、ditto dittoとのDITTO-TOKYOシリーズなど、複数展開している。哲学、コミック、活版印刷、映画と、それぞれ異なるジャンルの表現が同じ116というボトルの上に共存している。詳細はアーティストコラボレーションシリーズで確認できる。