ふたつの都市が出会う場所で。——ditto ditto という工房について。

ふたつの都市が出会う場所で。——ditto ditto という工房について。

くり返す日々に、奇跡がある。

同じ道を歩き、同じ時間に同じ景色を見る。そんな繰り返しの中にこそ、見過ごしてしまいがちな小さな発見がある——香港の小さな工房、ditto dittoはそう考えている。手描きのイラストと、活版印刷という古い技法。ふたつを組み合わせて生まれる作品は、CAMELの116・FLOW53・CUPPA35にも展開されている。工房の哲学と、ふたつの都市が出会うまでの物語をたどってみたい。

ditto dittoという工房について

香港・黄竹坑から生まれた小さな工房

ditto dittoは、香港の黄竹坑(ウォンチョッハン)にある小さなデザインスタジオだ。文房具やグリーティングカードを中心に、手描きイラストレーションと活版印刷を専門にしている。かつて工業地区として発展した黄竹坑。その街の一角に、この静かな工房はある。

チームを率いるのは、ファインアートを学んだデザイナーだ。色を混ぜ合わせ、日々の暮らしの中で見つけたものを描くことを楽しみながら、独自の色彩感覚を築いてきた。少人数のチームで、イラストレーションから印刷まで、ひとつひとつの工程に手をかけている。

営業やマーケティングを担うメンバー、活版印刷機と向き合う職人、日々の暮らしからインスピレーションを得るイラストレーター。役割は分かれていても、全員が「小さな発見を分かち合う」という同じ方向を向いている。この規模感だからこそ生まれる、細部への配慮がある。

ポストカード、グリーティングカード、ノートブックといった紙もの雑貨を中心に手がけながら、企業やブランドとのコラボレーション企画も数多く手がけてきた。紙という小さな面積の上で培われた表現力が、CAMELのボトルという立体物にも応用されている。

手描きと活版印刷、ふたつの技法

活版印刷(レタープレス)は、凸状の版にインキをのせ、紙に圧をかけて刷る伝統的な技法だ。プレス機が紙に食い込むことで、わずかな凹みと陰影が生まれる。指先でなぞると分かる、紙の手触りのニュアンス。これは、最新のデジタル印刷技術をもってしても再現できない質感だという。圧やインク、紙の組み合わせによって、印刷面に独特の表情が生まれる。

この工房の真骨頂は、この活版印刷と、手描きのイラストレーションが出会うところにある。ファインアートの素養を持つデザイナーの線が、活版印刷という手仕事の技法と組み合わさることで、機械的な均一さとは対照的な、温度のある一枚が生まれる。

インクの色を調整し、刷りの重なりや圧を確かめながら、紙の上に表現を重ねていく。デジタル技術とは異なる、活版ならではの手触りを大切にしている。

名前に込められた哲学

"ditto ditto"という言葉が意味するもの

"ditto"とは、英語で「同上」などを意味する言葉だ。ditto dittoは、その名に「日々の繰り返し」を重ね合わせている。

私たちはつい、毎日同じことの繰り返しを退屈だと感じてしまう。けれどその中にこそ、見過ごされがちな小さな奇跡があるはずだ——この工房は、そう信じてものづくりを続けている。

日常の中の、小さな発見

毎日は贈り物だという考え方を、この工房は大切にしている。特別な出来事だけでなく、道端の風景や、ふと目に留まった色、いつもの暮らしの中の小さな変化。そうした何でもない瞬間から着想を得て、作品に落とし込んでいく。

都市の日常に潜む小さな発見を、誰かと分かち合うこと。それが、この工房が掲げる創作の軸だ。派手な主張をせず、静かに、日々の暮らしに寄り添う表現を積み重ねてきた。急かされるように過ぎていく毎日の中で、あえて立ち止まり、周りを見渡す時間を持つこと。この工房の作品は、そうした余白を思い出させてくれる存在でもある。

東京と香港、ふたつの都市が出会うとき

116 DITTO-TOKYOというボトル

CAMELのアーティストコラボレーションシリーズのひとつとして、116(450ml)にはditto dittoが手がけたアートワークをまとった「DITTO-TOKYO」というモデルがある。香港を拠点にするditto dittoが描いたのは、東京のスカイラインだった。

このコラボレーションには、ditto ditto自身が掲げる「A Dialogue Between Cities(都市と都市の対話)」というテーマが重なる。日々の暮らしの中に奇跡を見出すという工房の哲学は、特定の街に限定されるものではない。異なる都市の日常を見つめても、そこには同じように、繰り返しの中の発見がある。東京と香港、ふたつの都市の感性が出会う一本として、このコラボレーションは生まれた。ひとつの街の日常を、まったく別の街を拠点にする作り手が見つめる。そこに生まれる視点のずれこそ、このシリーズならではの面白さかもしれない。

FLOW53・CUPPA35への展開

このDITTO-TOKYOというテーマは、116だけにとどまらない。FLOW53にも「DITTO-TOKYO」として、そしてコンパクトなCUPPA35にも、同じ世界観が展開されている。

ガラス内瓶の116、セラミックコーティングのFLOW53、テイクアウトカップ感覚のCUPPA35。使うシーンも、素材の性質も異なる3つのモデルに、同じアートワークの世界観が宿ることで、それぞれの持ち主が自分のスタイルに合わせてこのコラボレーションを選べるようになっている。

オフィスでじっくり味わう一本にはガラス内瓶の116を、アクティブに持ち歩くならFLOW53を、片手でさっと使いたいならCUPPA35を。用途は違っても、鞄の中や机の上にDITTO-TOKYOの世界観がひとつあるだけで、日々の景色は少しだけ変わる。ひとつの工房の眼差しが、暮らし方の違う人たちの手元に、それぞれの形で届いていく。素材も使い方も異なる3モデルにまたがって展開されていること自体が、このアートワークが持つ懐の深さを物語っている。

職人の手仕事と、活版印刷の手仕事

1940年に生まれた、香港のものづくり

CAMELは1940年、香港で生まれた真空ボトルブランドだ。戦時中に操業が中断された時期を経てもなお、香港でのものづくりを続けてきた歴史を持つ。ガラス内瓶モデルの116は、現在も香港の自社工場で、手作業の工程を含むものづくりを続けている。

ditto dittoが一枚一枚、活版印刷機に紙を通していく作業も、同じように地道な手仕事だ。Chandler & PriceやHeidelberg Windmillといった年代物の活版印刷機を使い、重ね刷りやグラデーションといった技法を重ねながら、一枚の紙に表現を積み上げていく。デジタル技術とは異なる、手仕事ならではの質感を大切にするという点で、私たちには、CAMELとこの工房に重なるものがあるように見える。

香港という土地が育てたもの

CAMELというブランドも、ditto dittoという工房も、香港という同じ土地から生まれた。密度の高い街並みの中で、手仕事の温度を大切にするものづくりを続けてきたという点で、両者は静かに響き合っている。

ひとつは飲み物を運ぶ道具として、もうひとつは紙という小さな面積の上で。それぞれ異なる形で、機械には再現できない手仕事の価値を伝え続けてきた。規模の大小に関わらず、手を動かして生まれる質感を諦めないという選択は、決して簡単なものではない。私たちには、そこにひとつの共通点が見える。

ボトルに、物語を込めるということ

116という、キャンバス

CAMELの116は、これまでも複数のアーティスト・工房とのコラボレーションを重ねてきた。Bruce Leeの哲学「Be Water」を宿した116や、香港の躍動感を描くJERRY CHOとのコラボレーション消えゆく街の記憶を描くPEN SOとのコラボレーションもそのひとつだ。ジャンルも表現手法も異なる作り手たちが、それぞれこの116というボトルを選んできた。

116の特徴のひとつは、ガラス内瓶という機能面での完成度に加えて、表面がアートワークを大きく見せられるシンプルな外装にある。実用品でありながら、作り手の表現を邪魔しない静かな佇まい。それが、多様な表現との協業を後押ししてきたのかもしれない。

日常に、小さな発見を持ち歩くということ

美術館やギャラリーでしか出会えない作品と、毎日バッグに入れて持ち歩くボトルは、本来遠い存在だ。CAMELのアーティストコラボレーションには、アートを日用品の中へ持ち込む面白さがある。

朝、水筒に手を伸ばすたびに、この工房が描いた東京の景色が視界に入る。それは、鑑賞するアートというより、生活の中に溶け込んだアートだ。特別な瞬間だけでなく、なんでもない一日の中にこそ、小さな発見を届けたい——その哲学が、ボトルという日用品の中にも息づいている。

忙しい毎日の中で、立ち止まって何かに気づく余裕はなかなか持てない。それでも、手に取るたびに視界に入るアートワークがあれば、ふとした瞬間に気持ちが緩む。そうした小さな瞬間の積み重ねを届けることが、このコラボレーションの静かなねらいだ。香港の工房が見つめた東京の風景を、東京や日本各地で暮らす人が日々持ち歩く。その巡り合わせ自体が、ひとつの小さな発見と言えるかもしれない。

ふたつの都市の記憶を、日々の中に

くり返す日々に、奇跡がある。この工房が伝え続けているのは、特別な瞬間だけを切り取るのではなく、なんでもない毎日の中にこそ価値を見出すという姿勢だ。その視線を、CAMELのボトルを通して、日々の暮らしの中に持ち帰ってほしい。持ち歩くたびに、ふたつの都市の記憶が、少しだけ手のひらに戻ってくる。そんな一本になれば、このコラボレーションは目的を果たしたことになる。手描きの線と、活版印刷の凹凸。目には見えにくい細部にまで宿る手仕事の気配を、日々の一杯とともに感じ取ってもらえたら嬉しい。都市と都市が対話するように、ボトルを介して、作り手と使い手もまた、静かに対話を続けている。

関連商品

116(450ml)コレクションを見る

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よくある質問

Q. ditto dittoとは、どんな工房なのか。

香港・黄竹坑を拠点にする、文房具・デザインスタジオだ。手描きのイラストレーションと活版印刷という伝統技法を組み合わせた作品づくりを行っている。「毎日は贈り物」という考え方のもと、日常の中の小さな発見をテーマに制作を続けている。ポストカードやグリーティングカードといった紙もの雑貨を中心に、企業とのコラボレーション企画も数多く手がけてきた。Nicole、Donna、Elsa、Ser、Maxという少人数のチームで、ひとつひとつの作品に向き合っている。

Q. 活版印刷とは、どんな技法なのか。

凸状の版にインキをのせ、紙に圧をかけて刷る伝統的な印刷技法だ。プレス機が紙に食い込むことで生まれるわずかな凹みや陰影、手触りのニュアンスは、最新のデジタル印刷技術でも再現が難しいとされている。

Q. DITTO-TOKYOには、どんなアートワークが描かれているのか。

東京のスカイラインを描いたアートワークだ。ditto ditto自身が掲げる「A Dialogue Between Cities(都市と都市の対話)」というテーマのもと、香港の工房が東京という街に向けた眼差しが表現されている。116(ガラス内瓶)のほか、FLOW53、CUPPA35にも同じ世界観が展開されている。

Q. 116シリーズに、ditto ditto以外のコラボレーションはあるか。

ある。香港出身のアーティストJERRY CHOやPEN SOとのコラボレーションモデル、Bruce Leeの哲学を宿したモデルなど、複数のコラボレーションを展開している。詳細はアーティストコラボレーションシリーズで確認できる。

Q. DITTO-TOKYOコラボレーションのテーマは何か。

ditto ditto自身が「A Dialogue Between Cities(都市と都市の対話)」と呼ぶテーマだ。香港を拠点にする工房が東京のスカイラインを描くことで、ふたつの都市の感性が一本のボトルの中で出会っている。

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